犬の乳腺腫瘍

 

どんな腫瘍?

犬の乳腺腫瘍は、雌に多く見られる腫瘍で

小型犬に多く発生します。

単純にしこりを見た場合、

半分は良性の乳腺腫瘍で、半分は悪性の乳腺腫瘍です。

また、悪性腫瘍のさらに半分は、悪い悪性腫瘍で、

局所浸潤・転移を起こしていきます。

診断は?

悪い悪性腫瘍は、多くは細胞検査でわかります。

ただ、それほど悪くないもの、良性の乳腺腫瘍の区別は、

手術で切除しなければわかりません。

また、悪い腫瘍の中には、

リンパ節、肺などに転移を起こしているものもあります。

治療前に、悪い乳腺腫瘍なのか?

腫瘍の進行度はどの程度のものなのか?

これらを見ていくのが診断の中心になります。

治療は?

治療の目的は、何を目的にするかで変わってきます。

悪性の乳腺腫瘍を疑う場合、

小さくしこりだけを取る手術はお勧めできません。

できれば、片側の乳腺全て、

少なくとも片側の半分の乳腺を手術で切除されるのがいいでしょう。

悪い乳腺腫瘍か診断がつかなかった場合は、

まず、診断のために、しこりのある乳腺付近を切除するのか、

(診断目的)

悪性腫瘍だと仮定し、

片側の乳腺(半分もしくは全部)を切除するのか、

(診断目的+治療目的)

また、乳腺腫瘍に悪性だと言える所見が無く、

大きさが変わらない場合は、

経過観察も飼い主さんが選択する選択肢の1つになります。

これらは、飼い主さんとの話し合いによって決定します。

また避妊手術に関しては、

避妊を行った方がよかったという報告と、

しても意味がなかったという報告の2つがあり、

現在では必ず避妊しなければならないという絶対的な根拠はありません。

(例えば、1cmの乳腺腫瘍でリンパ節、肺転移が認められないものは、

避妊を行わなくても、

乳腺の適切な切除だけで根治する可能性は極めて高いです。)

乳腺切除と同時に行う避妊に関しては、

獣医師の考えに左右される事もあります。

私の場合、

卵巣と子宮に、乳腺とは別の疾患がないのか?

乳腺腫瘍とホルモンの動きに連動がないのか?

など、いくつか基準を設け、

それらの所見と飼い主さんとの話し合いの末、

避妊を行うのか否かを決定する事にしています。

その他

手術をしたら、必ず、取ったものを、

病理組織検査に必ず出しましょう。

切除した乳腺腫瘍は悪性のものではなかったのか?

手術でちゃんと切除できていたのか?

転移や浸潤は認められなかったのか?

今後の治療を決める大きな要因になります。

(小さく取った場合でも必ず見ておく様に致しましょう)

 

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